「月探査」計画パブリックコメント募集に送った意見

宇宙開発戦略本部による意見募集(パブリックコメント)に対して、送った
意見です。ご参考までに。

月探査に関する懇談会 報告書(案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/tukitansa/houkokuan.pdf

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【月探査に関する懇談会 報告書(案)に対する意見】   杉原浩司

[P19:(別紙2)]
 審議経過に関して疑問を投げかけたい。今まで宇宙開発戦略本部は「宇
宙基本計画」策定に向けた「宇宙開発戦略専門調査会」などの委員会を非
公開(秘密審議)としてきた。ところが、今回の懇談会は傍聴可能とされ、
会議資料のホームページへの掲載も他委員会に比べて早いと言われている。
その理由は何か。また今後、他の委員会も同様に公開すべきと考えるがど
うか。

[P11:1.はじめに]
 「はじめに」では、「技術力・科学的知見の獲得」「日本の地位向上や
交渉力の向上」「地上の技術イノベーションにつながる」「次世代の子ど
もや若者に大きな感動」「日本の活力を高め、新たな文化を創造」と月探
査への最大級の美辞麗句が並んでいる。そもそも、月探査自体の是非も含
めた検討が行われるべきであるにも関わらず、月探査は既定方針とされて
いるかのようである。泉健太・内閣府政務官(宇宙担当)は、4月に行わ
れた記者会見で「月探査懇談会を開催したから月探査ありき、というわけ
ではない」と発言していたが、あの発言はどうなったのか。
 月探査も含め、巨額の税金投入が不可欠となる宇宙開発については、情
報をできる限り開示したうえで、開発の是非も含めて民意を問うべきであ
る。また、立法府である国会での十分な審議も経るべきであろう。今回の
手法は、民意を無視したものであり、民主主義の原則に反している。「ロ
ボット月探査計画の愛称募集」にまで踏み込んでいるが、本来こうしたや
り方は許されない。「民意偽装」ではなく、原点に立ち戻り、民主主義的
な政策決定プロセスを踏むことを主権者として強く要望したい。

[P1:2.月探査の目的①]
 そもそもなぜ太陽系探査が必要なのか、という疑問への説明が十分にな
されていない。貧困や格差の拡大、気候変動などの環境破壊、グローバル
な経済危機、やまない紛争など、地球上で解決されなければならない難題
は幾つも存在する。限られた予算を今、本当に太陽系探査に振り向けるべ
きなのか、という政策の優先順位をめぐる素朴かつ根源的な疑問にまずは
向き合うべきである。

[P2:2.月探査の目的③]
 「国際的プレゼンス」とあるが、その意味が不明である。安易にこの表
現が使われることが多いが、厳密な説明とは言い難い。月探査をしなくと
も、宇宙開発の協調的な国際ルールづくりに主導権を発揮することは可能
であろう。

[P5.P6.P10の経費試算について]
 2015年頃までの月探査に約600~700億円程度(P5)、2020年頃までの月
探査に累計約2000億円程度(P6)、有人宇宙活動への技術基盤構築には2020
年頃までに約900億円程度、その後の実機規模の研究開発のための第2ス
テップには数千億円規模を要する(P10)との「試算」が示されているが、
その試算の具体的な根拠が不明である。大まかであれ根拠を書き込むべき
である。また、有人宇宙活動への技術基盤構築への第2ステップにかかる
「数千億円規模」との表現は幅があり過ぎ、わからない。「数千」をより
具体的に示すべきである。

[P13:参考1の(2)の③(イ)]
 米オバマ政権が2020年までの有人月探査を目指すコンステレーション計
画を中止したことが書かれている。従来、日本の月探査構想は米国との連
携を前提としていたとも言われていた。米国の計画中止をどうとらえ、そ
の影響をどのように考えるかについての言及が一切ないのは不自然である。
ごまかさずにきちんと書き込むべきである。

[P8:3.4「国際ルール形成に向けた取組」]
 月協定は1967年に制定された宇宙条約を論理的に拡張させたものだと言
われている。日本は1969年の「宇宙開発事業団法」制定時の国会決議によ
って、宇宙開発は「平和の目的にかぎり」行うと明記し、その中身は「非
核、非軍事」であると明確にされた。宇宙条約をさらに徹底させた「宇宙
の平和利用原則」を国是としてきた日本が、軍事利用や資源競争(例えば
月には、核融合原子炉の燃料になるとされるヘリウム3が豊富に存在する)
への歯止めとなる月協定を今まで批准してこなかったのは不可解である。
その理由を示すべきだ。
 2008年5月に成立した「宇宙基本法」により宇宙の軍事利用への道が開
かれたが、政府は平和利用を今なお掲げており、報告書(案)にも「平和
利用を軸とした我が国の方針」とある。ならば、率先して月協定の早期批
准を行い、米国、ロシア、中国、インド、欧州諸国等にも批准を呼びかけ
るべきである。肝心の宇宙開発国の批准がない中で、日本の批准は大きな
意義を持ち、国連宇宙空間平和利用委員会等におけるリーダーシップを強
化することにもつながるだろう。2008年の「宇宙基本法」審議において宇
宙軍縮を主張されていた泉健太・内閣府政務官(宇宙担当)の積極的なイ
ニシアチブを期待したい。

[P8:3.4「国際ルール形成に向けた取組」]
 「平和利用を軸とした我が国の方針を反映できるように取り組む」とあ
る。しかし、宇宙基本法により宇宙の軍事利用が法的に解禁されたことに
加えて、宇宙技術は軍民両用(デュアルユース)の側面が強いとされる。
実際に、先日地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」において、大気圏
突入時の約3000度という高熱からカプセルを守った技術(IHIエアロス
ペース)は、ミサイルの先端など軍事用途にも使えるとされる(6月15日、
日経)。
 月探査や有人宇宙活動への技術基盤構築に向けて開発された技術が、軍
事転用(他国への技術供与も含めて)されない保証はない。それを未然に
防止するためにも、月協定への批准に加えて、宇宙基本法を改定し、軍事
利用を可能とする部分を削除すべきだと考える。
 米オバマ政権は、軍事用シャトルや地球上のあらゆる場所を1時間以内
に攻撃できる無人極超音速兵器の実験を行い、危険な原子力ロケットの開
発も構想している。中国等も宇宙における軍事能力向上を図りつつある。
そうした中で、日本は宇宙の平和利用原則を取り戻し、宇宙の非軍事化に
向けて強いイニシアチブを発揮すべきである。

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【参照サイト】

オバマは原子力の多様な利用による火星探査を提案(ブルース・ギャグノン)
http://www.anatakara.com/petition/mars-missions-of-the-nuclear-variety.html

2009年8月8日、「平和市長会議」(長崎市)におけるブルース・ギャグノン講演録
http://www.anatakara.com/petition/creating-an-integrated-vision-for-nuclear-abolition.html
(『世界』2010年6月号に補訳が掲載)

【後記】
意見募集(パブリックコメント)の結果について(宇宙開発戦略本部/2010年7月29日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/utyuu/tukitansa/100730pubcomme.pdf
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by nonukusandmd | 2010-06-17 20:05 | 活動記録
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「ミサイル防衛(MD)」や「軍産複合体」の終焉をめざして、動向をウォッチ、反対の声を発信します。在日米軍・日米安保やイスラエル・パレスチナ、チェチェン関連などの動きも一部カバーしています。


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